民事訴訟における管轄

契約書などで将来紛争になった場合に備えて、訴訟が係属する管轄裁判所を決める定めを見かけることはよくあるかと思います。このような管轄の定めは大して気に留めていないかも知れませんが、非常に重要な意味を持ちます。

先ず、合意管轄の種類として…

専属的合意管轄裁判所

当該裁判所でしか、原則として、訴訟提起をすることが出来ない管轄の合意。

付加的合意管轄裁判所

当該裁判所の他に、民事訴訟法に基づいて定められる裁判所への訴訟提起も認める管轄の合意。

の2つが合意管轄裁判所として挙げることが出来ます。

専属的合意管轄裁判所を定める場合は、原則として、当該定められた裁判所にしか訴えの提起ができませんので、隔地者間での契約のときは、極力自分の所在地に近いところを定めるように努めてください。

例えば、福岡県と東京都の方の間での契約で専属的合意管轄裁判所として東京の裁判所を定めた場合で、将来的紛争が生じてしまった場合には、福岡県の方には距離的ディスアドバンテージがあります。応訴としてしっかり対応するだけで高額な交通費などといった出捐があるため、自然人(個人)はこの時点で敗訴に向かいやすいポジションに立たされています。

2つ目の付加的合意管轄裁判所につきましては、訴訟提起をすることが出来る裁判所が増えるようなものですから(別に応訴管轄を検討し、管轄のないところに訴えてもいいわけですが…)、特に気にしなくていいかと思います。

なお、別途応訴管轄や専属管轄というものがあります。

応訴管轄

被告の応訴によって、本来管轄のない裁判所に管轄が生じるという意味での管轄。

専属管轄

民事訴訟法などで、特定の裁判所のみが有するという意味での管轄。

応訴管轄は上記のとおり、管轄のない裁判所に管轄を生じさせるものですが、専属的合意管轄の定めがある場合や付加的合意管轄の定め、専属管轄を有する裁判所があるのに、それぞれの定められた管轄裁判所以外の裁判所を提起し、被告が応訴した場合はどうなるでしょう。この場合、応訴したとしても専属管轄違反については応訴管轄が生じることはありません。しかし、専属的合意管轄と付加的合意管轄の場合は、応訴管轄が生じることとなります。

管轄は軽く見られることがありますが、管轄1つで戦えるか否かが大きく変わってくる案件も多々あります。何かしら契約を締結しようかという場面において、可能であるならば、圧倒的遠方に管轄があるような契約はさけられるとよいかと思います。

以上、多少マニアックでも重要な管轄の話でした。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次